睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群(SAS)について

睡眠中に何度も無呼吸や低呼吸を繰り返す疾患です。眠っている際に10秒以上呼吸が止まり、それが1時間に5回以上あると睡眠時無呼吸症候群が疑われます。ご自分で自覚されることは少なく、身近な方にいびきを指摘されて気付くケースが多くを占めます。
十分な睡眠時間があっても慢性的に深刻な睡眠不足となり、集中力が低下して、日中に抵抗できないほど強い眠気に襲われて一瞬意識が途切れることがあります。睡眠時無呼吸症候群による重大な事故が何度も報道されて一般の方にも知られるようになってきました。
睡眠時無呼吸症候群では、高血圧や糖尿病の発症リスクが2倍になり、こうした病気によって進行する動脈硬化によって脳卒中の発症リスクも4倍になると指摘されています。高血圧や動脈硬化、そしてそれによって起こる心疾患や脳卒中などは循環器に問題があって生じますので、循環器内科の専門的な診療を行う当院では、リスク管理も含めた睡眠時無呼吸症候群の治療にも力を入れています。
当院では、ご自宅で睡眠時に検査を行える簡易検査機器や治療機器の貸し出しを含めた保険診療を行っています。機器の貸し出しは宅急便を利用できますので、安心できます。
こうした特殊な検査や治療が必要になりますので、睡眠時無呼吸症候群の診療には電話などによるご予約が必要です。受診をご希望の場合にはお気軽にお電話などでご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群の種類

睡眠時無呼吸症候群は、肥満やあごの形などによって横になった際に気道が塞がれて生じる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が90%以上を占めます。それ以外には、脳疾患や心不全などによって起こる中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)があります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、適切な診断と治療により、睡眠時の無呼吸や低呼吸の症状を解消できます。

睡眠時無呼吸症候群による悪化リスクが懸念される疾患

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠時の無呼吸や低呼吸で血液中の酸素濃度は著しく低下し、血液中の二酸化炭素濃度が高くなるなど、血液循環に多大な悪影響を及ぼし、深刻な数多くの病気を悪化させるリスクが高くなります。

心臓病

冠動脈疾患で血流が悪化し、血流改善の治療を受けた方の追跡調査の結果、睡眠時無呼吸症候群の既往がある場合には、ない場合に比べて心臓への血流が悪化しやすい傾向があると報告されています。

脳血管障害

睡眠時無呼吸症候群重症の場合、脳卒中・脳梗塞の発症リスクが3.3倍になると報告されています。

糖尿病

睡眠時無呼吸症候群の重症度が上がるに連れ、糖尿病が合併するケースも増加することが報告されています。

睡眠時無呼吸症候群の症状

就寝時の症状

  • いびき
  • 無呼吸
  • 低呼吸

ご本人では自覚できないことが多いため、苦しそうないびき、激しいいびき、呼吸が止まることがある、大きくあえぐなどを身近な方に指摘された場合には、早めに受診してください。

日中の症状

  • 突然、抵抗できないほど激しい睡魔に襲われる
  • 意識が一瞬途切れる、落ちるようにごく短時間眠ってしまう
  • 集中力が低下した
  • 全身がだるい
  • 抑うつ状態
  • 逆流性食道炎の症状がある
  • 横になると咳が出やすい
  • 睡眠時間は十分なのにスッキリしない
  • 起床時に頭痛や疲労感がある
  • 夜間頻尿
  • トイレに行きたくて目覚める回数が増えた
  • 性欲が低下した
  • 口呼吸でのどの炎症を繰り返す
  • 風邪をひきやすい

睡眠時無呼吸症候群の検査

睡眠時無呼吸症候群の検査

ご自宅で睡眠時の呼吸状態や酸素濃度を計測する簡易検査が可能です。帝人ヘルスケア株式会社の機器を郵送し、手順書に従い簡単な機器を装着していただき検査を実施いたします。機器は帝人ヘルスケア株式会社に返送していただき、その結果を分析して診断します。
1時間に起こった無呼吸と低呼吸の平均回数がAHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)という数値で示され、0~5は正常、6~20は軽症、21~30は中等症、31~50は重症、51以上は最重症 に分類されます。
検査結果と、丁寧にうかがった症状やお悩みの内容などを総合的に判断して診断します。日中の眠気を判断する基準として、8種類の状況に応じた眠気を調べるEpworth Sleepiness Scale(ESS エプワース眠気尺度)を行うこともあります。

睡眠時無呼吸症候群の治療

睡眠時無呼吸症候群では、呼吸のための空気の通り道である気道が狭窄・閉塞して低呼吸や無呼吸を起こします。こうした低呼吸や無呼吸を起こさないようにする有効な治療法として、CPAP(持続陽圧呼吸)療法が欧米や日本でも主流になっています。専用の機器を使って適切な圧力の空気を送り、睡眠中の気道を確保して低呼吸や無呼吸を起こさずにスムーズな呼吸ができるようにする治療法です。短期間に睡眠の質が向上し、日中の強い眠気や集中力の低下の解消にも役立ちます。心疾患や脳疾患の発症リスクや、生活習慣病の進行・発症予防にも効果が期待できます。
ただし、治療をやめてしまうと低呼吸や無呼吸を再発します。根本的な治療のためには、肥満解消など原因にアプローチした治療が必要になります。

検査・治療の流れ

睡眠時無呼吸症候群の診察や治療は保険適用されます。必ず保険証をお持ちください。

1外来受診

問診で症状やお悩みの点、日中の眠気などについて丁寧にうかがいます。睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、検査や治療などについてわかりやすくご説明し、ご質問にもお答えしています。なんでもお気軽にお尋ねください。
ご自宅で行う簡易検査をご希望の場合には、当院よりご自宅へ宅急便で検査機器をお送りします。結果説明のご予約を初診の日にされる場合には、宅急便の手配から返却までの期間を考慮し、2週間以上後のスケジュールをお勧めしています。

2検査

機器会社である帝人ヘルスケア株式会社より、ご自宅へ検査機器が届きます。就寝前に同封の説明書を読みながらセンサーを装着します。センサーは動きにもほとんど影響しませんので、後は普段通りに眠ってください。

3機器返送

返送用の袋や伝票などは、お送りした検査機器に同封されています。必要な項目を記入して、帝人ヘルスケア株式会社へご返送ください。機器が返却されると、検査データが当院に送られてきます。

4外来受診

検査結果についてくわしくお伝えします。睡眠中の1時間に起こった無呼吸と低呼吸の平均回数がAHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)という数値として示されます。この数値がAHI20以上の場合に治療が必要になります。症状やお悩みの内容なども含めて診断し、治療方針を患者さんと相談しながら決めていきます。
CPAP(持続陽圧呼吸)療法を行う場合には、治療方法や機器について、くわしくお伝えしています。

5治療開始

CPAP(持続陽圧呼吸)療法を行う場合、機器会社である帝人ヘルスケア株式会社よりご自宅へ機器が送られてきます。この機器はコンセントがあれば使用可能であり、それ以外に準備いただく必要はありません。

6定期受診

CPAP(持続陽圧呼吸)療法では、毎月1回の定期受診が必要です。毎月受診してください。

7根本的な治療につなげるために

CPAP(持続陽圧呼吸)療法は、睡眠中の低呼吸や無呼吸を解消できますが根本的な治療ではなく、CPAP(持続陽圧呼吸)療法を中断すると睡眠時の低呼吸や無呼吸が再び起こります。根本的な治療のためには、原因にアプローチした治療が必要です。肥満がある場合は減量し、適正体重を保持しましょう。また、禁煙も続けるようにしてください。なお、痩せていてあごの形などによって睡眠時無呼吸症候群を起こしている場合には、歯科医院で専用の治療用マウスピースをつくり、装着して睡眠することで軽減できる場合もあります。

費用

保険診療で3割負担の場合の目安の費用です。

検査 2,700円+通常の初診または再診料
治療 4,050円+通常の再診料/月
keyboard_arrow_up