足や顔のむくみ
むくみは身体に水分がたまっている状態です。水分がたまりやすい足や、ちょっとした変化を感じやすい顔は、むくみに気付きやすい部分です。指で皮膚を押した痕がしばらく残る場合、むくみがかなり進行しています。また急激な体重増加も重度のむくみが疑われます。むくみの程度が強い場合、疾患の症状として起こっている可能性が高くなります。
むくみの原因
むくみは、血流のうっ滞、血中水分量過多などによって起こっています。水分や塩分の過剰摂取でむくみを生じていることが多く、デスクワークなど座っている時間が長い、運動不足などでもむくみを生じます。水分を多くとることが健康にいいとされていますが、むくみが生じる場合は逆効果であり、適量を超えて水分をとっているということです。
また、むくみは疾患の症状として起こっていることもあります。心臓・血管・腎臓・肝臓・甲状腺など、むくみを起こす疾患は様々な臓器に生じます。むくみが状態の悪化につながるケースも多く、命にかかわる心臓疾患によって生じている可能性もありますので、むくみに気付いたら早めに循環器内科を受診してください。
むくみを起こす機能低下
心臓機能低下
心臓疾患などにより心臓機能が低下し、全身に十分な血液が遅れなくなっている状態が心不全です。血液量が不足すると腎臓に送られる血液量も減り、尿が十分につくられず水分が体内にたまってむくみを起こします。足にむくみを起こすことが多く、進行すると肺にも水がたまって息切れや呼吸困難などを生じます。
腎臓機能低下
腎臓は血液をろ過して余計な水分や老廃物から尿をつくります。腎臓疾患などで腎臓機能が低下すると、余計な水分やナトリウムを十分排出できない、大量に蛋白尿によって全身水分バランスをとれないなどを起こし、むくみを生じます。
肝機能低下
肝臓は、タンパク質の生成や分解、有害物の分解などの様々な機能を持っています。肝機能障害によってこうした機能が十分に働かなくなるとむくみを生じます。特に肝臓でつくられるアルブミンが不足する低アルブミン血症になると、血液中の水分が血管外に出てしまうため、むくみを起こします。
甲状腺機能低下
甲状腺でつくられる甲状腺ホルモンが不足すると活動性が大幅に低下し、全身の様々な場所にむくみを生じます。急激な体重増加、冷え、便秘、疲労感、倦怠感などを起こしやすく、うつ病や更年期障害に間違われやすい疾患です。適切な血液検査で診断でき、治療によってこうしたつらい症状が改善できますので早めの受診をお勧めします。
急性肺動脈塞栓症(エコノミークラス症候群)
座ったまま長時間過ごすなどで血流が悪化すると、足に血栓ができて血流が阻害されて足がむくむ深部静脈血栓を発症することがあります。この血栓が血流によって肺に運ばれた状態が肺塞栓症です。肺のどこに血栓が詰まるかによって、息切れ、胸の痛み、呼吸困難などの症状を起こし、命にかかわることも少なくありません。飛行機のエコノミークラスで起こった事例が報道されてエコノミークラス症候群と呼ばれています。災害避難の車中泊などでも起こることがありますので、座ったまま長時間過ごす場合は、こまめに足を動かして血流を改善させることを心がけ、足のむくみに気付いたらすぐに医療機関を受診してください。
下肢静脈瘤
歩く機会が極端に減ってふくらはぎのポンプ機能が低下し、足の静脈に血液がたまって足のむくみや静脈瘤を生じる疾患です。足の皮膚のすぐ下にボコボコした血管の塊が浮き出たり、細く赤いクモの巣のような血管広がったりといった症状を起こします。命に危険が及ぶことはありませんが、悪化すると潰瘍を繰り返すなど足の皮膚の状態が悪化してしまいます。
むくみで受診が必要なケース
座りっぱなしで急激に足がむくんだ場合は、急性肺動脈塞栓症(エコノミークラス症候群)の可能性があります。命にかかわる可能性がありますので、すぐに医療機関を受診してください。息切れや呼吸困難が伴う場合、心臓疾患で肺に水がたまっている可能性があり、狭心症や心筋梗塞などの深刻な疾患が隠れている可能性があります。急激な体重増加が伴う場合も、様々な疾患がかなり悪化している可能性が高い状態です。こうした症状がある場合は早めに循環器内科を受診しましょう。
特に他の症状を伴わないむくみは問題がないケースもありますが、深刻な疾患の初期症状で生じていることもあります。むくみや過剰な水分は多くの疾患を悪化させやすいため、1度循環器内科を受診して原因疾患の有無を調べ、ご自分に適した水分摂取量などを聞いておくと安心できます。
足のむくみで受診した際の検査
患者さんのお話をうかがって、むくみの状態を確かめます。命の危険があって早急な治療が必要な心不全の有無を調べるために、心電図、心エコー(超音波)検査、胸部X線検査などを行います。
血液検査で、心不全の重症度を示すBNP、貧血、腎機能、肝機能、甲状腺機能などをチェックします。また、D-ダイマーを調べることで血栓のできやすさを把握します。さらに、下肢血管エコーや造影CT検査を行い、検査結果を総合的に診断して適切な治療につなげます。
急性肺動脈塞栓症(エコノミークラス症候群)が疑われる場合には、血栓が肺に飛んでいないかをしっかり把握することが重要です。
特に疾患がない場合には、過剰な水分や塩分の摂取、運動不足などによってむくみを起こしていると考えられます。尿検査を行って1日の塩分摂取量を確認し、適切な制限や運動内容などを丁寧にご指導し、むくみの解消につなげます。
心不全によるむくみの治療
摂取する水分や塩分の制限、運動療法、薬物療法を患者さんの状態にきめ細かく合わせて行います。
塩分と水分の制限
塩分と水分を適切に制限することで体重が落ち、むくみも解消できます。塩分は1日6g、水分は1日1,000~1,200mlを目標に制限します。塩分と水分の制限はなかなか難しいのですが、できるだけ無理なく続ける様々な工夫があります。また、体重や血圧などをご自宅でこまめに測って記録することもモチベーションアップに有効です。
運動療法(心臓リハビリテーション)
適切な運動を習慣的に続けることで心臓や血管の機能や血液循環が改善します。特に歩くことで足の筋肉を動かすことが足のむくみ解消には役立ちます。激しい運動は必要なく、少し遠い店まで歩いて買い物に行く、1駅分歩くなど、日常に取り入れやすく、無理なく続けられる運動が適しています。
薬物治療
心臓の負担を減らす薬、余計な水分を出すための利尿剤などから、患者さんの状態にあった処方を行います。利尿剤はむくみの解消に高い効果が期待できますが、脱水症状や腎機能低下につながる可能性があります。こうしたことから利尿剤はむくみが広範囲にあって生活に支障がある場合や、むくみによって疾患が悪化している場合などに使われます。